【インタビュー】Okazu Brand/林尚志氏 その1

OKAZU brandのデザイナー林尚氏インタビューの第2回。内容は、2017年10月にインタビューした内容となっております。

前編

海外版が出版される流れについて

ニコボド

今や全世界で新作が発売されているOKAZU brandさんですが、どのような流れで海外版が出版されるようになったのでしょうか?

Okazu Brand:林尚志

ヤポンブランドがきっかけです。実はヤポンブランドに誘って下さったのがカワサキファクトリーの川崎さんでした。

ニコボド

川崎さんの『R-Eco』なども早くから海外で出ていましたね。

Okazu Brand:林尚志

ヤポンブランドでは、最初に『ひも電』を委託しました。

Okazu Brand:林尚志

当時日本の有名なデザイナーさんを誘っていて、常次さん(操られ人形館)とかにも声をかけていたと記憶しています。

『ひも電』は、2社から声がかかりました。 1社がカナダのFoxMind、ヨーロッパはAsmodeeからです。最終的に、両方から『ひも電』が発売されました。

ニコボド

現在では、海外版はゲームマーケットでの発表後に半年以内に発売する流れとなっているようにお見受けしますが、発表後すぐに海外出版社から話があるのですか?

Okazu Brand:林尚志

ゲームマーケットの前日にヤポンブランド主催の海外交流会があるのですが、そこで決まることが多いです。

最近は、あんまり競争したくないからということで条件を出して頂いて、Tasty Minstrel Games (TMG)とは仲いいですね。遊んだ日の夜にFacebookでメッセージが来ます。ラフな条件がきて、本格的な契約に至ります。

ニコボド

様々な出版社さんからオファーがくるかと思うのですが、国ごとに契約するのですか?

Okazu Brand:林尚志

契約には、ワールドワイドライセンスを渡して各国のサブライセンスを渡す場合と、言語毎に契約する場合があります。

ニコボド

今はどちらが多いのですか?

Okazu Brand:林尚志

ワールドワイドが多いです。今、市場としてアメリカがホットなので英語版を欲しがっていますね。

ニコボド

海外の出版社へゲームをご自分で売り込むことはあるのですか?

Okazu Brand:林尚志

昔は自分から売り込みもしてみたのですが、うまくいかなくて最近はあまりやってないですね 。

エッセンに行った際にサンプルを渡したりしていました。

わかったこととしては、実際の印刷物が仕上がっているほうが自分の国で売るにはこの絵にしようなど出版社側もイメージがつきやすいみたいです。

プロトタイプのゲームを渡しても、出版社から「これじゃわからない」といわれてしまいます。

ニコボド

なるほど。実際のコンポーネントやカードアイコンなどのイメージが実際の製品のほうがつきやすいということですね。

ボードゲームのテーマについて

ニコボド

さきほど、アメリカ市場がアツいとおっしゃっていましたが、2017年にドイツゲーム賞を受賞した『テラフォーミングマーズ』なんかもアメリカのゲームという印象を受けました。

Okazu Brand:林尚志

デザイナーはスウェーデン人ですけどね(笑)

実は、ドイツだとSFテーマは売れないんです。SFとゾンビはアメリカ。

ニコボド

なるほど!

Okazu Brand:林尚志

ヨーロッパだと中世。バイキングなんかもドイツですね。

ニコボド

個人的にバイキングのテーマって全然ピンとこないんですよね。想像がつかなくて…日本はなんですかね?




Okazu Brand:林尚志

いまはそれほどでもないですが、アニメとかですかね。日本人はテーマ重視なので、理屈の通ったテーマがついていないと売れないと考えています。

日本が「テーマ」、欧州が「システム」、アメリカが「データ」とよくいわれています。

ニコボド

データとはどいういったもののことを言うのですか?

Okazu Brand:林尚志

めちゃくちゃカードが多く全部ユニークカード。バランスをあまり考えていない感じです。

たとえば、「これは(現実に基づくと)実際はこういう強さなので、カードでも強いんだよ。たとえバランスが悪くてもしょうがない。」みたいなイメージがあります。

ニコボド

なるほど。そういった国ごとの特色を見ながら遊んでみると、違ったゲームの面白さがありそうですね。

Okazu Brand:林尚志

フランスはアメリカとドイツの中間位でしょうか。アメリカのゲームなんだけど、おしゃれなデザイン付けて少し軽くしてる。アントワーヌ・ボザ氏(『世界の七不思議』など)、ブルーノ・カタラ氏(『キングドミノ』など)はそんな感じです。



エッセンでのサイン会について

ニコボド

エッセンなどに行かれた際ですが、サインをねだられたりすることはあるのですか?

Okazu Brand:林尚志

たまに言われますね。ヤポンブランドブースにいたので、「お前のゲーム買ってきたよ!」と向こうの出版社のゲームを持ってきてくれてサインをすることがあります。

ニコボド

エッセンでは、デザイナーさんがブースでサイン会することがありますよね。こちらはされたりはしましたか?

Okazu Brand:林尚志

まだ体験してないんですよ!

ニコボド

そうなのですね。『横濱紳商伝』のヒットがありましたし、今後サイン会開催があると良いですね。

ニコボド

2016年にエッセンに行った際、アレクサンダー・プフィフィスター氏(『グレート・ウエスタン・トレイル』『アイル・オブ・スカイ』など)のサインが欲しかったんですよね。ただ、1日目しか私は参加できなくて、彼のサイン会は週末だった関係で断念しました。

Okazu Brand:林尚志

彼は本業が忙しくて、エッセンに来れるのは土日なんですよね。

確かファイナンシャル・アナリストだったりするんですよね。

ニコボド

そうですね。過去にインタビュー和訳をした際にそのように答えていました。

あれだけ世界的ヒットを多数だしていても兼業なのかと思ってしまいますね。

Okazu Brand:林尚志

勝手なイメージなんですけど、ドイツってマイスターの国でボードゲームマイスターはないんじゃないかなと思っているんです。

ドイツってマイスターの国で職業ごとにランクが儲けられているんですね。例えばパン職人マイスターとか。なので、ボードゲームデザインマイスターがないんじゃないかと勝手に思っているんです。

ドイツ人は高校生の時にコースがわかれていて大学に行くわけではなくどのマイスターに進むか決めるんです。

ニコボド

マイスターの資格があれば職に困らない仕組みになっているということですね。そういった仕組みは大変面白いですね。勉強になりました。



テストプレイについて

ニコボド

ゲームデザインにおけるテストプレイなどについて教えて下さい。

アントワーヌ・ボウザ氏が、ゲームマーケット2017春でテストプレイは50回はするべきということをおっしゃっていました。林さんはテストプレイはどのくらい実施されていますか?

Okazu Brand:林尚志

30ゲーム位でしょうか。基本的には、頭の中でバランスを整えています。

でも実際にプレイしてみたら違ってたりとか、

ほかのプレイヤーの表情を見てみると、苦そうな顔や、つまらなそうな表情をしていないかなどを見ています。

最初は絶対に一緒に入った方が良いですね。その後は入ったり入らなかったりします。

ニコボド

期間的にはどのくらいですか?

Okazu Brand:林尚志

短いゲームは1~2ヶ月、重量級は半年です。

ニコボド

『横濱紳商伝』も半年くらいですか?



Okazu Brand:林尚志

本格的に作り始めてからだいたい半年ですね。

あのときはかなりテストプレイ頑張りました

ニコボド

テストプレイ環境は困ることはありますか?オープンゲーム会に持ち込まれたりされるのですか?

Okazu Brand:林尚志

最初は決まったメンバーでやっています。オープン会などには、あまり持ち込んだりはしていません。

決まったメンバーは、面子の個性がわかるのでそちらで繰り返し遊びます。オープン会はほぼ完成していて、どこがわかりにくいかの参考などにします。

ただ、テストプレイ回数は増やしたいですね。現状週1~2回位なので・・・

ニコボド

にゃもさん(OKAZU Brandの全てのアートワークを担当)とはテストプレイはされないのですか?

Okazu Brand:林尚志

ないですね。僕のゲームを1回もやらずにイラストを描いてくれています。

ニコボド

ええっ???!

にゃもさん

『横濱紳商伝』はやったことないです。

ニコボド

『横濱紳商伝』は重いですしね。軽めのゲームな『ひつ陣』などはいかがですか?

にゃもさん

ゲムマで初めてやりました。

ニコボド

なるほど。ちょっと驚きました。

Okazu Brand:林尚志

でもボードゲームは好きなんですよ。

ただ、僕とは絶対に一緒にやらないですね。

ニコボド

何故でしょうか?家にもすごい数のゲームがあるのに...

Okazu Brand:林尚志

僕がプレイヤーとしてめんどくさいからじゃないですか?熟練者なので。

協力ゲーム(パンデミック)とかはやりました。

ニコボド

対戦じゃなければいいんですね。

負けて嫌いになってもお仕事に支障をきたしますからね(笑)



ゲームバランスの調整について

ニコボド

ゲームバランスの整え方について教えて下さい。

Okazu Brand:林尚志

こんなゲームを作りたいとなったあとにエクセルでデータにまとめます。次にパワポでカードを作ります。そのあと、エクセルのデータってバランスの評価式みたいなのを作ります。

それをチューニングするのがバランスとりです

ニコボド

評価式というのは複雑なものなのですか?

Okazu Brand:林尚志

その辺をどうするかという式を毎回いれかえています。A~Cがあって、Cの方が強くてAとBの半分にしてという感じです。

カードの強さを数値化したということになります。これには欠点もあって、AとBのリソースを使うカードがあって、そこにテコ入れをすると他のカードにも影響するんです。

ニコボド

評価式の解は勝利点なんですか?

Okazu Brand:林尚志

それも要素の1つです。様々な要素の評価値がでます。



ニコボド

なるほど。さまざまな要素があると。

Okazu Brand:林尚志

前職ではデジタルゲーム会社にいて、横でそういうことをしてる人がいたんで。見よう見まねでやりました。

デジタルゲームだと数千アイテムあるので、そちらの方がより複雑です。デジタルゲームのゲームデザイン本などに載っているかと思います。

ニコボド

以前式を使っているというのを見かけて、どういう仕組みなのかが気になっていました。

Okazu Brand:林尚志

カード毎に評価値を付けて、これが強いこれが弱いというのを決めています。 最終的にそれが何枚ずつ出てくるかを調整しています。

そうしないと重ゲーは作れないですね。式がないと、すこし変化させたときに他のところへの影響が出ていたりすることもあります。

(式がないと)このカードだけじゃなく、あっちのカードも直さなければいけなかったのに、直すのをわすれたりということになりえます。

ゲームシステムには式はなく、カードや『横濱紳商伝』での土地の効果などに具体的に用いられています。

ニコボド

教えて頂きありがとうございます。自分でも少し勉強してみます。(つづく)

おわりに

今回は、OKAZU brandデザイナー・林尚志氏 へのインタビューをお送りしました。次回、日本のボードゲームシーンなんかについてのお話やNHKのボードゲーム特集に出演された際の裏話も。乞うご期待!