先日、2014年のドイツ年間エキスパートゲーム大賞にノミネートされたことのあるゲーム『ロココの仕立て屋』を遊びました。
5年前の作品ですが、あまりの面白さに久しぶりにテンションが上がりました!
『ロココの仕立て屋』
服を仕立ててパーティーに送り出すゲーム。ラウンド中できるアクションは3つなのだけれど新たにカード購入して拡大再生産する感じが楽しい。
新版でみんな盛り上がってるけど、どんななの?って思って遊んだけどめちゃくちゃ面白い‼️これ欲しいですサイコー pic.twitter.com/zyh3KXfNHi— ニコ (@ikoan_kfa) February 6, 2020
ゲームデザイナーが、『グレンモア』や『ランカスター』を手がけたマティアス・クラマー氏であることもあって「小クラマー最高!!」となった一方で「eggertspiele最高!!」ともなりました。
eggertspieleは、『ロココの仕立て屋』『グレート・ウエスタントレイル』『ヘブン&エール』などを手がける出版社です。これらの3つのゲームはどれも大好きなゲームなのですが、共通点として「Development: Viktor Kobilke」という名前が載っているということを見つけます。
そしてこう思いました・・・
そんな仮説に基づき、Viktor Kobilke氏について色々調べてみたのでその内容を書いてみます。
Viktor Kobilke氏について
(引用:Twitter)
Viktor Kobilke氏(@mr_alvko)は、元eggertspieleの編集者だ。eggertspieleで編集/ディベロップを手掛けたゲームには『村の人生』『キャメルアップ』『モンバサ』などがあり、eggertspieleがPlan B Gamesに買収されてからは『アズール』などのディベロップメントを手掛けてきた。
挙げた4つのゲームは、どれも「ドイツ年間ゲーム賞(Spiel des Jahres/Kennerspiel des Jahres)」や「ドイツゲーム賞(Deutscher Spielepreis)」を受賞した作品となっている。
- ドイツ年間エキスパートゲーム大賞2012 大賞
- ドイツゲーム賞2012 大賞
- ドイツ年間ゲーム大賞2014 大賞
- ドイツゲーム賞2016 大賞
- ドイツ年間ゲーム大賞2018 大賞
という感じに近年のドイツボードゲームシーンにおいて、多くの賞に関わっている編集者がこのViktor Kobilke氏なのである。
編集の仕事について
過去のインタビュー記事などで、編集の仕事がどのようなものか語られていた。
編集の仕事はゲームデザイナーから預かったベースとなるゲームのテストプレイ用のキットを作ったり、ルールブックを作る。
そして、デザイナーやテストプレイヤーと共にテストプレイを繰り返して課題を解決する。
参考
10 Fragen an Viktor KobilkeBrettspiegel
ゲームデザイナーが生みの親であるとすると、編集者は育ての親といった感じなのかなとイメージした。
「Dr.スランプ」「ドラゴンボール」における編集・鳥嶋和彦氏。「B’z」における編曲・明石昌夫氏といった感じであろう。
90年代前半のB’zの曲のほとんどは明石昌夫氏編曲。その他、BAAD「君が好きだと叫びたい」(スラムダンクのオープニング)、SIAM SHADE「1/3の純情な感情」(るろうに剣心オープニング)などを手掛けています。
旧eggertspieleでの仕事
Viktor Kobilke氏は、2006年にPD VergとEggetspieleが共同で手掛けた「インペリアル」でデベロップを経験。
Alfred Victor Schultz名義でLookoutspieleから『Age of Discovery』で2007年にデビュー。「アラカルトゲーム賞2007」で大賞を獲得する。
その後2010年からeggertspieleで編集を担当し、『村の人生(2011)』『ロココの仕立て屋(2013)』『キャメルアップ(2014)』』『モンバサ(2015)』『グレート・ウエスタン・トレイル(2016)』などを手がけた。
ディベロップメント(Development)のクレジットについて
旧eggertspieleのゲームのルールブックの末尾には、誰がディベロップを行ったのかが記載がされている。この記述が標準的に用いられるようになったのは『モンバサ』以降で、それ以前は”Rule book&Rule book layout”という形で記載がされていた。
これは推測だが、「『モンバサ』のデベロップ頑張ったし、俺の名前をちゃんと載せたいな」となったのかもしれない。
実際、『モンバサ』は「ヒッポダイス・デザイナーコンテスト」で、2011年に1位を獲得した『アフリカ1830(Afrika 1830)』という作品を製品化したもの。
ゲームデザイナーのアレクサンダー・プフィシュター氏はボードゲームデザイナーの仕事を副業としていることもあり、実際にゲームをまとめあげたのはコビルケ氏の手腕によるものが大きいものと予想される。
旧eggertspieleのタイトルとディベロッパーは以下の通りとなっています。(Alfred Victor Schultz=Victor Kobilke)
ゲーム名 | 編集 | ディベロップ |
---|---|---|
ヘブン&エール | Philippe Schmit | Viktor Kobilke Philippe Schmit |
リワールド | Viktor Kobilke | Viktor Kobilke |
アニマルオンボード | Viktor Kobilke | Viktor Kobilke |
フロッグライダー | Viktor Kobilke | Viktor Kobilke |
キャメルアップカードゲーム | Viktor Kobilke | Viktor Kobilke |
炭鉱賛歌カードゲーム | Viktor Kobilke | Viktor Kobilke |
ヨービック | Philippe Schmit | 記載なし |
グレート・ウエスタン・トレイル | Viktor Kobilke | Viktor Kobilke |
私の村の人生 | Viktor Kobilke | Viktor Kobilke |
モンバサ | Viktor Kobilke | Viktor Kobilke |
ポルタニグラ | Philippe Schmit | 記載なし |
グロッグアイランド | Viktor Kobilke | 記載なし |
ホスピタルラッシュ | Viktor Kobilke | 記載なし |
炭鉱讃歌 | Alfred Victor Schultz | 記載なし |
ロココの仕立て屋 | Alfred Victor Schultz | 記載なし |
Time ‘n’ space | Alfred Victor Schultz | 記載なし |
倉庫の街 | Harald Lieske | 記載なし |
Milestones | Alfred Victor Schultz | 記載なし |
Qin | Alfred Victor Schultz | 記載なし |
Spectaculum | Alfred Victor Schultz | 記載なし |
Yedo | Alfred Victor Schultz | 記載なし |
ペルガモン | Alfred Victor Schultz | 記載なし |
Principato | Thygra Board Game Agency | 記載なし |
Santiago de cuba | Alfred Victor Schultz | 記載なし |
モンテクリスト伯の秘密 | 記載なし | Sophie Gravel Martin Bouchard |
村の人生(新版) | Viktor Kobilke | Viktor Kobilke |
2010年以降では「モンテクリスト伯の秘密」「倉庫の街」「ポルタニグラ」「ヨービック」以外の全てに携わっている。
Plan B Gamesでの仕事
eggertspieleは2017年にPlan B Gamesに買収され、以降Viktor Kobilke氏はeggertspieleのタイトルのほかに新ブランドNext Move Gamesのディベロップメントも手がけるようになり、『アズール』『アズール:シントラのステンドグラス』『リーフ』のデベロップメント(連名)を手掛けた。
【ゲーム紹介】アズール (Azul)
【ゲーム紹介】アズール:シントラのステンドグラス (Azul: Stained Glass of Sintra):人気ゲーム「アズール」の続編!
【ゲーム紹介】リーフ (Reef):サンゴ礁を作るパズルゲーム!!
Plan B Games傘下に入って以降は、eggertspiele、Next Move Games共にプロデューサーとして代表のSophie Gravel氏が参加。メインのアートディレクションは彼女が決め、その下で開発が行われいる。
『Azul』『Reef』『Beez』は柄のついた背景に中央に4文字英語のタイトルが入るパッケージデザインになっている。
買収後から、eggertspiele創業者のPeter Eggert氏もデベロップに名を連ねるようになったのも特徴の1つ。
Plan B Games傘下でのeggertspiele、Next Move Gamesのタイトルとディベロッパーは以下の通りとなっている。
eggertspiele
ゲーム名 | 編集 | ディベロップ |
---|---|---|
ERA | Andre Bierth | Peter Eggert Katja Volk Andre Bierth Martin Bouchard Moritz thiele |
ブラックアウト:香港 | Philippe Schmit | Viktor Kobilke Peter Eggert Philippe Schmit |
コインブラ | Viktor Kobilke | Viktor Kobilke Peter Eggert Philippe Schmit |
Next Move
ゲーム名 | 編集 | ディベロップ |
---|---|---|
5211 | Sophie Gravel | Philippe Schmit Katja Volk Andre Bierth Martin Bouchard |
アズール:サマーパビリオン | Katja Volk | Philippe Schmit Katja Volk Andre Bierth Moritz Thiele |
アズール:シントラのステンドグラス | Viktor Kobilke | Viktor Kobilke |
アズール | Viktor Kobilke Sophie Gravel | Viktor Kobilke Philippe Schmit |
リーフ | Viktor Kobilke | Viktor Kobilke Philippe Schmit Katja Volk |
TUKI | 記載なし | Martin Bouchard Viktor Kobilke Peter Eggert Philippe Schmit |
旧eggertspieleでは、ほぼワンオペのような開発体制だったが、Plan B Gamesへ移行してからはチームとしてのディベロップメントへ移行していることがわかる。
チームでのディベロップメントがKobilke氏にとって良かったのか悪かったのかはわからないが、地元が近いという理由でPlan B GamesからFrosted Gamesへ移っており、2019年に発売された「ERA」「5211」「アズール:サマーパビリオン」のディベロップメントには名前がない。
Frosted Gamesへの移籍
2019年1月にコビルケ氏はeggertspiele(Plan B Games)を退社し、Frosted Gamesへ移る(その後、Peter Eggert氏も退社)。
Viktor Kobilke氏がeggertspieleで手掛けた最後のタイトルは『ヘブン&エール』の拡張セット『ヘブン&エール 樽生お届け便』となった。
Frosted Gamesでは『Watergate』『Cooper Island』などを手掛けており、どちらもBoard Game Geekでは高評価のタイトルとなっている。
2020年1月には、Peter Eggert氏らと共に新出版社Deep Print Gamesを設立。SPIEL’20では『Renature』というクラマー&キースリングの新作ゲームを発表する予定になっている。
【ニュース】『ゲームマーケットin新宿ハンズ』開催、フランス年間ゲーム大賞2020に「リトルタウンビルダーズ」がノミネートなど
おわりに
今回はViktor Kobilke氏について調べた内容をつらつらと書いてみました。
正直あまりゲームシステムの特徴がどうのとかデベロップメントの傾向がこうのとか、そういった分析は力量不足でできていません。コビルケ節みたいのを見出した方は是非教えて頂きたいです❗️
最近は未プレイのコビルケゲーが遊びたくて悶々としております。(『リワールド』『フロッグライダー』『炭鉱賛歌』が遊びたい!)
皆さんもルールブックのクレジットを研究すると好きなゲームの共通点が何か見えてくることがあるかもしれないので参考にしてみてはいかがでしょう。ここまでお読みいただきありがとうございました!!