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【特集】凄腕のボードゲーム編集者・Viktor Kobilke氏について調べてみた

【特集】凄腕のボードゲーム編集者・Viktor Kobilke氏について調べてみた

先日、2014年のドイツ年間エキスパートゲーム大賞にノミネートされたことのあるゲーム『ロココの仕立て屋』を遊びました。

5年前の作品ですが、あまりの面白さに久しぶりにテンションが上がりました!

ゲームデザイナーが、『グレンモア』や『ランカスター』を手がけたマティアス・クラマー氏であることもあって「小クラマー最高!!」となった一方で「eggertspiele最高!!」ともなりました。

eggertspieleは、『ロココの仕立て屋』『グレート・ウエスタントレイル』『ヘブン&エール』などを手がける出版社です。これらの3つのゲームはどれも大好きなゲームなのですが、共通点として「Development: Viktor Kobilke」という名前が載っているということを見つけます。

そしてこう思いました・・・

「もしかすると、自分はViktor Kobilkeの手がけたゲームが好きなのかもしれない」

そんな仮説に基づき、Viktor Kobilke氏について色々調べてみたのでその内容を書いてみます。

Viktor Kobilke氏について


(引用:Twitter

Viktor Kobilke氏(@mr_alvko)は、元eggertspieleの編集者だ。eggertspieleで編集/ディベロップを手掛けたゲームには『村の人生』『キャメルアップ』『モンバサ』などがあり、eggertspieleがPlan B Gamesに買収されてからは『アズール』などのディベロップメントを手掛けてきた。

挙げた4つのゲームは、どれも「ドイツ年間ゲーム賞(Spiel des Jahres/Kennerspiel des Jahres)」や「ドイツゲーム賞(Deutscher Spielepreis)」を受賞した作品となっている。

  • ドイツ年間エキスパートゲーム大賞2012 大賞
  • ドイツゲーム賞2012 大賞

  • ドイツ年間ゲーム大賞2014 大賞

  • ドイツゲーム賞2016 大賞

  • ドイツ年間ゲーム大賞2018 大賞

という感じに近年のドイツボードゲームシーンにおいて、多くの賞に関わっている編集者がこのViktor Kobilke氏なのである。

編集の仕事について

過去のインタビュー記事などで、編集の仕事がどのようなものか語られていた。

編集の仕事はゲームデザイナーから預かったベースとなるゲームのテストプレイ用のキットを作ったり、ルールブックを作る。

そして、デザイナーやテストプレイヤーと共にテストプレイを繰り返して課題を解決する。


参考
10 Fragen an Viktor KobilkeBrettspiegel

ゲームデザイナーが生みの親であるとすると、編集者は育ての親といった感じなのかなとイメージした。

「Dr.スランプ」「ドラゴンボール」における編集・鳥嶋和彦氏。「B’z」における編曲・明石昌夫氏といった感じであろう。

明石昌夫氏について

90年代前半のB’zの曲のほとんどは明石昌夫氏編曲。その他、BAAD「君が好きだと叫びたい」(スラムダンクのオープニング)、SIAM SHADE「1/3の純情な感情」(るろうに剣心オープニング)などを手掛けています。

旧eggertspieleでの仕事

Viktor Kobilke氏は、2006年にPD VergとEggetspieleが共同で手掛けた「インペリアル」でデベロップを経験。

Alfred Victor Schultz名義でLookoutspieleから『Age of Discovery』で2007年にデビュー。「アラカルトゲーム賞2007」で大賞を獲得する。

その後2010年からeggertspieleで編集を担当し、『村の人生(2011)』『ロココの仕立て屋(2013)』『キャメルアップ(2014)』』『モンバサ(2015)』『グレート・ウエスタン・トレイル(2016)』などを手がけた。

ディベロップメント(Development)のクレジットについて

旧eggertspieleのゲームのルールブックの末尾には、誰がディベロップを行ったのかが記載がされている。この記述が標準的に用いられるようになったのは『モンバサ』以降で、それ以前は”Rule book&Rule book layout”という形で記載がされていた。

これは推測だが、「『モンバサ』のデベロップ頑張ったし、俺の名前をちゃんと載せたいな」となったのかもしれない。

created by Rinker
アークライト(Arclight)

実際、『モンバサ』は「ヒッポダイス・デザイナーコンテスト」で、2011年に1位を獲得した『アフリカ1830(Afrika 1830)』という作品を製品化したもの。

ゲームデザイナーのアレクサンダー・プフィシュター氏はボードゲームデザイナーの仕事を副業としていることもあり、実際にゲームをまとめあげたのはコビルケ氏の手腕によるものが大きいものと予想される。

ゲーム紹介『モンバサ (Mombasa)』

旧eggertspieleのタイトルとディベロッパーは以下の通りとなっています。(Alfred Victor Schultz=Victor Kobilke)

ゲーム名編集ディベロップ
ヘブン&エールPhilippe SchmitViktor Kobilke
Philippe Schmit
リワールドViktor KobilkeViktor Kobilke
アニマルオンボードViktor KobilkeViktor Kobilke
フロッグライダーViktor KobilkeViktor Kobilke
キャメルアップカードゲームViktor KobilkeViktor Kobilke
炭鉱賛歌カードゲームViktor KobilkeViktor Kobilke
ヨービックPhilippe Schmit記載なし
グレート・ウエスタン・トレイルViktor KobilkeViktor Kobilke
私の村の人生Viktor KobilkeViktor Kobilke
モンバサViktor KobilkeViktor Kobilke
ポルタニグラPhilippe Schmit記載なし
グロッグアイランドViktor Kobilke記載なし
ホスピタルラッシュViktor Kobilke記載なし
炭鉱讃歌Alfred Victor Schultz記載なし
ロココの仕立て屋Alfred Victor Schultz記載なし
Time ‘n’ spaceAlfred Victor Schultz記載なし
倉庫の街Harald Lieske記載なし
MilestonesAlfred Victor Schultz記載なし
QinAlfred Victor Schultz記載なし
SpectaculumAlfred Victor Schultz記載なし
YedoAlfred Victor Schultz記載なし
ペルガモンAlfred Victor Schultz記載なし
PrincipatoThygra Board Game Agency記載なし
Santiago de cubaAlfred Victor Schultz記載なし
モンテクリスト伯の秘密記載なしSophie Gravel
Martin Bouchard
村の人生(新版)Viktor KobilkeViktor Kobilke

2010年以降では「モンテクリスト伯の秘密」「倉庫の街」「ポルタニグラ」「ヨービック」以外の全てに携わっている。

Plan B Gamesでの仕事

eggertspieleは2017年にPlan B Gamesに買収され、以降Viktor Kobilke氏はeggertspieleのタイトルのほかに新ブランドNext Move Gamesのディベロップメントも手がけるようになり、『アズール』『アズール:シントラのステンドグラス』『リーフ』のデベロップメント(連名)を手掛けた。

【ゲーム紹介】アズール (Azul)
アズール:シントラのステンドグラス 【ゲーム紹介】アズール:シントラのステンドグラス (Azul: Stained Glass of Sintra):人気ゲーム「アズール」の続編!
【ゲーム紹介】リーフ (Reef):サンゴ礁を作るパズルゲーム!!

Plan B Games傘下に入って以降は、eggertspiele、Next Move Games共にプロデューサーとして代表のSophie Gravel氏が参加。メインのアートディレクションは彼女が決め、その下で開発が行われいる。

Next Move Gamesの箱絵

『Azul』『Reef』『Beez』は柄のついた背景に中央に4文字英語のタイトルが入るパッケージデザインになっている。

買収後から、eggertspiele創業者のPeter Eggert氏もデベロップに名を連ねるようになったのも特徴の1つ。

Plan B Games傘下でのeggertspiele、Next Move Gamesのタイトルとディベロッパーは以下の通りとなっている。

eggertspiele

ゲーム名編集ディベロップ
ERAAndre BierthPeter Eggert
Katja Volk
Andre Bierth
Martin Bouchard
Moritz thiele
ブラックアウト:香港Philippe SchmitViktor Kobilke
Peter Eggert
Philippe Schmit
コインブラViktor KobilkeViktor Kobilke
Peter Eggert
Philippe Schmit

Next Move

ゲーム名編集ディベロップ
5211Sophie GravelPhilippe Schmit
Katja Volk
Andre Bierth
Martin Bouchard
アズール:サマーパビリオンKatja VolkPhilippe Schmit
Katja Volk
Andre Bierth
Moritz Thiele
アズール:シントラのステンドグラスViktor KobilkeViktor Kobilke
アズールViktor Kobilke
Sophie Gravel
Viktor Kobilke
Philippe Schmit
リーフViktor KobilkeViktor Kobilke
Philippe Schmit
Katja Volk
TUKI記載なしMartin Bouchard
Viktor Kobilke
Peter Eggert
Philippe Schmit

旧eggertspieleでは、ほぼワンオペのような開発体制だったが、Plan B Gamesへ移行してからはチームとしてのディベロップメントへ移行していることがわかる。

チームでのディベロップメントがKobilke氏にとって良かったのか悪かったのかはわからないが、地元が近いという理由でPlan B GamesからFrosted Gamesへ移っており、2019年に発売された「ERA」「5211」「アズール:サマーパビリオン」のディベロップメントには名前がない。

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アークライト(Arclight)

Frosted Gamesへの移籍

2019年1月にコビルケ氏はeggertspiele(Plan B Games)を退社し、Frosted Gamesへ移る(その後、Peter Eggert氏も退社)。

Viktor Kobilke氏がeggertspieleで手掛けた最後のタイトルは『ヘブン&エール』の拡張セット『ヘブン&エール 樽生お届け便』となった。

Frosted Gamesでは『Watergate』『Cooper Island』などを手掛けており、どちらもBoard Game Geekでは高評価のタイトルとなっている。

2020年1月には、Peter Eggert氏らと共に新出版社Deep Print Gamesを設立。SPIEL’20では『Renature』というクラマー&キースリングの新作ゲームを発表する予定になっている。

【ニュース】『ゲームマーケットin新宿ハンズ』開催、フランス年間ゲーム大賞2020に「リトルタウンビルダーズ」がノミネートなど

おわりに

今回はViktor Kobilke氏について調べた内容をつらつらと書いてみました。

正直あまりゲームシステムの特徴がどうのとかデベロップメントの傾向がこうのとか、そういった分析は力量不足でできていません。コビルケ節みたいのを見出した方は是非教えて頂きたいです❗️

最近は未プレイのコビルケゲーが遊びたくて悶々としております。(『リワールド』『フロッグライダー』『炭鉱賛歌』が遊びたい!)

皆さんもルールブックのクレジットを研究すると好きなゲームの共通点が何か見えてくることがあるかもしれないので参考にしてみてはいかがでしょう。ここまでお読みいただきありがとうございました!!